ADコンバーター(ADC)開発

市場に先駆けて、産業界の未来を支える「新たな可能性」を探求する。
―ADコンバーター(ADC)開発プロジェクト―

MEMBER プロジェクトメンバー

O

R&D第2プロジェクト課長(当時)
現:アナログ回路設計部門 部長

T

R&D第2プロジェクト担当部長

H

アナログレイアウト設計部門 係長

N

アナログ回路設計部門 エンジニア

半導体産業の黎明期から市場の変化やニーズに応えてきた三栄ハイテックス。多角的な事業の主軸がアナログ回路設計部門だ。
クライアントの期待を背負った回路設計を、蓄積してきた技術と細部にまでこだわり抜く精神で成し遂げ、市場内で確固たる地位を築いてきた。

O アナログ回路設計部門は半導体メーカーをはじめとしたお客さまの依頼を受けて開発をする受注開発型の事業モデルとなっています。依頼をもとに設計して納品する。そのフローを地道に続けてきたことで、多くのお客さまから信頼を得ることができました。

N 三栄ハイテックスとして築き上げてきた経験や技術をもとに、お客さまの期待に応えるアナログ回路設計の仕事。責任ある仕事にエンジニアとしてとてもやりがいを感じていました。

そんな中エンジニアたちの新たな挑戦が始まることになる。
受注開発型から一線を画す「攻めの開発」プロジェクトだ。

O 今回取り組んだのは、市場に先行して新たな回路設計を開発するプロジェクトです。受注開発では回路設計に1年以上かかるのが当たり前。自社開発という未知に近い領域に挑戦するのは、今まで以上にお客さまのビジネスをスピーディーに後押しできるというメリットがあるからです。

三栄ハイテックスが積み重ねてきた技術に裏打ちされたアナログ開発は高い評価を受けてきた。
センサー分野のIC開発依頼に応え盤石の事業基盤を構築する中、なぜ今市場の未来を先駆けた“攻めの開発”に取り組むのか。

O アナログのIC開発にはリスクがつきまといます。想定どおりに設計しても思うような性能が出ずスケジュールに影響が出ることがあります。お客さまにはそのリスクをご理解いただいてますが、迅速に提供できるに越したことはありません。今回のプロジェクトは、実際に成果物を先行して開発することで納期以外にもあらかじめ性能を保証できるというメリットがあります。

プロジェクトで開発したのが「ADコンバーター」。
オーディオや産業・医療機器などさまざまな製品に用いられる回路方式の中でも、より動作性を高め、より消費電力を減らすといった高性能な回路開発だ。

O 私が全体のプロジェクトの取りまとめを行いました。チームは仕様作成から回路設計、レイアウト、評価、解析のプロフェッショナルで構成し、私を含めた主要メンバー4人で1年という限られた期間でADコンバーターの開発に取り組みました。

H ADコンバーターのレイアウトを担当しました。Oさんから独自の方式を試すという話を聞き、レイアウト担当として、設計を担うNくんやTさんが思い描く回路を実現する意気込みで参加しました。

N 三栄ハイテックスで導入実績のない新しい技術を取り入れていくと聞き、1年という決まった期間の中で設計から評価まで完遂できるのか、正直不安もありました。

T 主に評価、ブロックの回路設計を担当しました。開発の現場から十数年離れていましたが、Oさんが想定しているイメージやスケジュールに沿うようなかたちで進められるように意識しました。

市場に先駆けて新たな可能性を開拓しようと始まった4人の挑戦。
1年後というリミットが日に日に迫り、プレッシャーもかかる中、プロジェクトチームはいくつもの課題に直面した。

H 壁に直面した時の解決策はコミュニケーションに尽きます。ここにいる3人はレイアウト設計を十分理解していて、自分ゴトとして問題を考えてくれる。チームで問題を共有して建設的な話し合いができたことはプロジェクトを進行する上で大きかったです。

N 最後の検証で想定していた特性が全く出てこない時には、リミットが迫る中で焦りが生まれました。そこでも解決の糸口を見つけられたのは、Hさんが言うように話し合いの場をもてたからです。前向きな意見を聞けて自分自身も焦りを抑えられ、「最後まで頑張ろう」っていう諦めない気持ちで解決に突き進めました。

T 実機の評価を担当しましたが、期待通りの結果が出てこないこともあり容易ではありませんでした。今までの実績や経験をもとにOさんといろいろと相談しながら解決策を導き出しました。
O NさんやTさんが挙げた改善点も、プロジェクト全体としては大事な収穫のひとつです。三栄ハイテックスとして前例のない先行開発ということで、実機を作り評価してみないとわからないことは多く、それを明確化できたところは十分な成果なのかなと思ってます。

T 概ね期待する特性は得られましたので、特性の改善余地については“今後の可能性”としてとらえています。

H 限られた期間での開発は順風満帆にはいきませんでしたが、レイアウト設計エンジニアとして妥協せずやりきれました。発足時に「なるべく小さく作ってほしい」という要望があり、得意領域として実現できたからこそ達成感があります。

N ものづくり本来の喜びというか、「0から作る」「自分が作ったものを自分の手で動かす」というところは今までにない経験でした。その感覚を得られたのはすごい良かったです。

プロジェクトを成し遂げた4人は、手掛けたADコンバーターの可能性を感じるとともに、今回の経験から生まれる“副産物”にも期待を込める。

O 完成品についてお客さまからの反応は上々です。応用製品をトライアルしたいという話も出ています。「実際にもうできるんだ」と驚きをもってとらえていただいているので、先行開発の効果の大きさを肌で感じています。

N 今回のプロジェクトに向けて、新しい技術について調査や検討を重ねたことで私自身の引き出しが増えました。これからも新たな領域にも積極的に関わりながら知見を広め、アナログ回路設計部門のメンバーに還元していきたいです。

T プロジェクトを通して評価の難しさと重要性を実感しました。私は引き続きR&D部門に残るので、今回の経験を糧に引き続き先行開発に貢献していきたいです。

H 自社開発の面白さをもっとたくさんのエンジニアに経験してもらいたいですね。取り組んでいる最中は苦難も多く、くじけそうになることもありますが、終わってみると面白さや達成感で心が満たされます。先行開発をやってみたいという若手もいるので、これからR&D部門で新たな技術や製品が生まれることを期待しています。
※2023年10月時点での情報です。