【MBD技術研修編】モデルベース開発(MBD)エンジニアへ!三栄ハイテックスのMBD技術者育成プログラム(OFF-JT)

2025.8.4

社員教育

三栄ハイテックスが注力するモデルベース開発(MBD)エンジニアの育成について、全4回のシリーズでご紹介します。
今回は、当社で実施しているMBD技術研修について紹介します。
実務ツールを用いてスキルを磨く「MBD技術研修」:第一線で活躍できる技術者へ
MBD技術研修は、モデルベース開発(MBD)に必須なモデル作成能力に重点を置いた当社独自のカリキュラムです。少人数制の講習形式で、以下のような幅広い知識とスキルを習得します。
 MBD技術研修で習得できる知識・スキル
  • MATLAB言語によるプログラミング
  • Simulinkを用いたモデル作成とシミュレーション法
  • 適切なモデル作成に欠かせない制御工学の知識
  • モーター制御や自動車の駆動システムに関する知識

約4カ月間というゆとりのある研修期間を設けています。実務で扱うMATLABやSimulinkなどのツールを用いて、受講者のペースに合わせた丁寧な指導を行うことで、着実なスキルアップを目指します。
モデルベース開発(MBD)は、自動車業界を中心に導入が進んでいる開発手法です。モデルベース開発(MBD)には多くのメリットがありますが、導入するためにはモデルに関する専門スキルを持った技術者が多数必要になるという課題も存在します。当社では、こうしたお客さまのニーズに応えるべく、研修カリキュラムを用意し、モデルベース開発(MBD)技術者を育成しています。
 

MBD技術研修カリキュラム

MBD技術研修では、MBD技術者としてのスキルを段階的に身につけられるよう、以下のカリキュラムを用意しています。
  • MBDの概要
  • MBDの全フローのチュートリアル
  • 電駆動システムの基礎
  • モーターの基礎
  • モーターのセンサー
  • モーター制御の基礎
  • モーター制御の実際
  • MATLAB / Simulinkの基礎
  • MATLAB / Simulinkの実務
  • MATLABプログラミング
  • モデリングの基礎
  • モデル設計課題
  • Stateflow入門
  • JMAAB
  • 自動コード生成
  • 制御システムの概要
  • 制御工学
  • マイコンの基礎
  • HILS

MBD技術研修の目的と特徴

MBD技術研修の目的

MBD技術研修の目的は、以下の2点です。
 
  • 基本的な専門知識の習得
  • モデル作成のノウハウを身につける

研修終了後、スムーズに現場へ参加できるよう、ツールの扱い方やアルゴリズムのモデル化について深く学びます。また、モデルの読み取りや作成に必要な、制御工学や自動車の駆動システムといった専門知識も習得します。

MBD技術研修の特徴

MBD技術研修の主な特徴は以下の通りです。
 
  • 未経験者向けの内容
    未経験者向けに基礎的な部分から丁寧に解説します。
  • 少人数制
    少人数制であるため、講師からのサポートが手厚く、疑問や困りごとはすぐに相談できます。
  • 演習中心の実践的な学習
    業務で扱うMATLABやSimulinkといったツールを使いながらノウハウを学びます。演習に力を入れているため、自然と実践的なスキルが身につきます。
  • ゆとりのある研修期間(約4カ月)
    約4カ月間の研修期間を設けているので、じっくり時間をかけてスキルを習得できます。また、受講生一人ひとりのペースに合わせて研修を進めるため、無理なく着実に成長できる環境です。

育つ能力と得られる知識

MATLAB言語によるプログラミング

本研修では、MATLAB言語によるプログラミング能力を身につけるため、以下のような内容を学びます。
 
  • MATLAB言語の基本文法の習得
    変数、演算子、フロー制御など、他のプログラミング言語にも見られるようなMATLAB言語の文法について、一から学びます。
  • コマンドラインでの関数実行
    MATLAB関数の実行、変数を保存するワークスペースの管理などを、シンプルなコマンドで操作する方法を学びます。
  • Simulinkモデルを操作するスクリプト記述
    Simulinkで作成したモデルを、MATLAB言語のスクリプトで操作し、シミュレーションの自動化やデータ管理を行う方法を学びます。
  • 演算処理を行うスクリプト記述
    関数やフロー制御を使って、行列計算などの複雑な処理を行うスクリプトの書き方も実践的に学びます。
SimulinkはMathWorks社が開発・販売しているMATLABToolboxの一つで、モデリングやシミュレーションを行うツールです。

Simulinkを活用することで、パラメーター最適化や自動シミュレーション、結果の解析などができるようになります。また電気、熱、流体といった異なる物理法則をもつ分野を一つのモデルでまとめて扱える「マルチドメインシミュレーション」に対応しており、広い分野が含まれる大規模なシステムを扱うことを得意としています。

このように、「モデリング」「シミュレーション」「コーディング」といったモデルベース開発(MBD)に必要な機能がそろっているため、当社ではモデルベース開発(MBD)業務の主要なツールとしてSimulinkを利用しています。

Simulinikによるモデル作成とシミュレーションの能力を身につけるため、主に以下の内容に取り組みます。
 
  • Simulinkの基本的なブロックとモデル作成
    よく使うブロックの機能や使い方を中心に、簡単なモデルの作り方を学びます。
  • ブロック線図を用いたアルゴリズムのモデル化
    実践的な演習を通して、求められる処理に合ったアルゴリズムを自分で考えて、モデルとして実現する技術を習得します。
  • モデルの適切なシミュレーション
    目的に沿ったテスト条件の設定方法を学び、MATLABスクリプトを使って実際にシミュレーションを行い、その結果をまとめる経験を積みます。

PI-D制御系のブロック線図とモデル

PI-D制御系(微分先行型PID制御系)のブロック線図
PI-D制御系(微分先行型PID制御系)のブロック線図
MATLAB/Simulinkによるモデリング
MATLAB/Simulinkによるモデリング

適切なモデル作成に必要な制御工学の知識

制御工学は、システムを目的の状態で維持したり、システムに思い通りの動きをさせたりするなど、対象システムを理論と技術で制御しようとする専門分野です。システムを分析して数式のモデルを作成し、そのモデルの目的に合わせて制御方法を設計するというアプローチで、広い分野のシステムを制御できます。

当社のモデルベース開発(MBD)業務では、お客さまから提供されたモーターやインバーターの仕様を基に、制御モデルの作成と検証を行っています。お客さまのご要望に沿ったモデルを作成するためには、ツールを扱うスキルだけでなく、制御工学の確かな知識が不可欠です。

モデル作成に必要な制御工学の知識を身につけるための研修では、以下のような内容を学びます。
 
  • 制御システムの概要
    制御の種類や設計方法について、実際の制御モデルに触れながら設計の知識を学びます。
  • システムの伝達関数
    システムの入力と出力の関係を数式で表す伝達関数という概念を学びます。システムそのものやコントローラーについて伝達関数を求めて、その式の特性を理解できるようになります。
  • PID制御のパラメーター
    PID制御が持つ比例・積分・微分という三つのパラメーターの役割と決定方法を学びます。
  • 制御モデルの性能評価
    時間や周波数などの観点から、モデル化したシステムの特性を評価する方法を習得します。

モーター制御や自動車の駆動システムに関する知識

自動車業界では、世界的な流れとして自動車の電動化が進んでいます。日本でも経済産業省から「2035年までに乗用車の新車販売において、電動車100%を実現する」という目標が発表されています。自動車の電動化が進むと、モーターをはじめとする電駆動システムを開発する技術者の需要が増加します。

当社のモデルベース開発(MBD)業務では、電動車の駆動システムを取り扱っているため、関連技術者の育成が不可欠です。モーター制御や自動車の駆動システムに関するモデルを作るためには、これらのシステムに関する知識が非常に重要となります。

モーター制御や自動車の駆動システムに関する知識を得るための研修では、以下のような内容を学びます。
 
  • モーターの構造と動作原理
    業務で扱うブラシレスモーター(PMSM)を中心に、さまざまな動作原理を持つモーターについて学習します。
  • モーター制御の全体像
    制御工学の知識を活用しながら、ブラシレスモーター(PMSM)を制御する流れや、その中で使われている技術について学びます。
  • ハイブリッド車の駆動システム
    エンジンの使い方によっていくつかのタイプに分かれるハイブリッドシステムの駆動システムとその特徴を学びます。
MATLAB/Simulinkによる車両状態のモデリングの一例【図】
MATLAB/Simulinkによる車両状態のモデリングの一例
MATLAB/Simulinkによる車両状態のモデリングの一例
MBD技術研修は、近年需要が高まっているモデルベース開発(MBD)に対応できる技術者を育成することを目的としています。座学で知識を身につけつつ、業務で扱うMATLAB / Simulinkを用いた実践的な演習を重ねることで、体系的なスキルの習得が可能です。受講者のペースに合わせて、約4カ月間の丁寧な指導を行うことで、未経験からでも着実なスキルアップを目指せます。
次回は、「仕事力研修」について詳しくご紹介していきます。どうぞご期待ください!

執筆者プロフィール

O.K.
モデルベース開発
[2024年 新卒入社]
茨城大学 理学部理学科 卒業
O.R.
モデルベース開発
[2024年 新卒入社]
名城大学 理学部機械工学科 卒業